以前、弊所のコラム(令和5年2月1日付コラム)で、令和4年の民事訴訟法の改正(以以「令和4年改正法」といいます)による民事訴訟のIT化等についてご紹介させていただきましたが、令和5年6月6日、「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(以下「本改正法」といいます)が成立し、同月14日に交付されました。
本改正法により、令和4年改正法に続き、民事裁判手続について全面的なIT化が進むことになりました。本コラムでは、本改正法のうち、破産手続に関する概要の一部(申立て及びウェブ会議等)について確認したいと思います。一般的には、破産法は民事訴訟法を準用していることから、準用規定を介して、民事訴訟法のIT化が破産手続にも適用されることになります。
〈①インターネットを利用した申立て及び送達〉
まず、申立てについては以下のとおり改正されました。
・破産手続における申立て等のうち、当該申立て等に関する破産法その他の法令の規定による書面等をもってするものとされているものであって、裁判所に対してするものについては、当該法令の規定にかかわらず、インターネットを利用してすることができるようになりました(新破産法第13条の準用する新民事訴訟法第132条の10)。
例えば、破産手続開始申立てや破産債権の届出はオンライン提出が可能となります。
なお、弁護士や破産管財人等(以下まとめて「弁護士等」といいます)が行う裁判所に対する申立て等はインターネットを用いて行うことが義務とされています(新破産法第13条において読み替えて準用する新民事訴訟法第132条の11)。ただし、弁護士等は、口頭ですることができる裁判所に対する申立て等については、インターネットの使用によらずに口頭で行うことができます。
その上で、送達についての改正の概要は以下のとおりです。
・新民事訴訟法による手続と同様、送達すべき対象に電磁的記録も加わり、インターネットによる送達方法もとることができるようになりました(新破産法第13条の準用する新民事訴訟法第109条及び新破産法第13条において読み替えて準用する新民事訴訟法第132条の11参照)。
・裁判所に対する申立て等をインターネットを使用する方法によってすることを義務づけられている弁護士等は、送達についても、インターネットによる送達方法により送達を受ける旨の届出をすることが義務とされました(新破産法第13条において読み替えて準用する新民事訴訟法第132条の11第1項及び第2項参照)。
〈②破産管財人の債権者委員会に対する報告〉
・破産管財人は、破産法第153条第2項又は第157条の規定により裁判所への提出が義務付けられている書面(以下「報告書等」といいます)について、債権者委員会に対しては、報告書等の提出に代えて、最高裁判所規則で定めるところにより、債権者委員会の承諾を得て、当該報告書等に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができるようになりました(新破産法第146条第3項)。
〈③ウェブ会議の利用〉
・民事訴訟と同様に、口頭弁論の期日についてはウェブ会議(新破産法第13条の準用する新民事訴訟法第87条の2条第1項及び第3項)、審尋の期日については電話会議又はウェブ会議を利用して期日に参加することができるようになりました(新破産法第13条の準用する新民事訴訟法第87条の2第2項及び第3項、新破産法第13条の準用する新民事訴訟法第187条第3項及び第4項)。
・破産手続には民事訴訟にはない破産手続特有の期日がありますが、債権調査期日(新破産法第121条の2及び第122条第2項)、債権者集会の期日(新破産法第136条の2)等についてはウェブ会議を利用して期日に関与することができるようになりました。
以上です。本改正法は民事裁判手続をデジタル化するものですので、破産法のほか、家事事件手続法や非訴事件手続法など、様々な改正が行われています。デジタル化一般について、従来の運用からの変更点に注意が必要です。