【コラム】成年後見制度の改正

令和8年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」及び「民法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が成立し、同月24日に公布されました。これにより、これまでの成年後見制度が様々な点で変更がなされますが、ここでは、「法定後見制度」から「法定補助制度」への類型の変更について、その概要を確認します。

 

これまで「法定後見制度」として後見、保佐、補助の3類型が定められていましたが、上記の改正により、「法定補助制度」となり、後見及び補佐が廃止され、補助制度に一元化されることとなります。

成年後見類型では、事理弁識能力の程度によって、後見、補佐、補助いずれかに該当するとされ、利用できる制度が画一的に法定されていました。

しかし、法定補助制度においては、上記の通り補佐制度のみとなり、代理権、同意権、取消権について、具体的に必要となる行為を特定し、それぞれ付与申立を行うこととなります。

 

同意権や取消権を付与することができる行為については、改正後の9条2項において定められておりますところ、これまでの民法13条1項と同様に「重要な財産上の行為」と規定されております。その内容をみると、新たに

「預金又は貯金の預入又は払戻しの請求をすること」

「居住の用に供する建物の大修繕に関する工事の請負契約その他の重要な役務の提供に関する契約を締結すること」

「不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること」

が追加されており、同意権、取消権を付することができる権利は、同条文が定める11の行為に限られることとなります。

【改正民法 抜粋】

第九条 家庭裁判所は、次に掲げる場合において、必要があると認めるときは、補助開始の審判を受けた者が特定の行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。

一 補助開始の審判をする場合において、第七条第一項に規定する者から請求があったとき。

二 補助開始の審判があった後、第七条第一項に規定する者又は補助人若しくは補助監督人から請求があったとき。

2 前項の特定の行為は、次に掲げる行為のうち家庭裁判所が定めるものをいう。

一 預金又は貯金の預入又は払戻しの請求をすること。

二 元本を領収し、又は利用すること。

三 借財又は保証をすること。

四 居住の用に供する建物の大修繕に関する工事の請負契約その他の重要な役務の提供に関する契約を締結すること。

五 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。

六 訴訟行為をすること。

七 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。

八 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。

九 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。

十 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。

十一 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者及び前項又は次条第一項の規定による審判を受けた者をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。

(中略)

5 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。

第十一条 家庭裁判所は、次に掲げる場合において、必要があると認めるときは、補助開始の審判を受けた者のために特定の法律行為について補助人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。

(略)

したがって、原則として、代理権及び同意権・取消権について、ひとつずつ必要性を検討し、必要なものを組み合わせる必要があることとなります。

 

その上で、改正民法10条は「事理を弁識する能力を欠く常況にある者であり、かつ、必要があると認めるとき」には、「特定補助人を付する旨の審判をすることができる。」として、9条2項列挙事由全てについての取消権を認め、「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」の保護を図る形としております。

なお、この場合にもまとめて付与されるのは取消権のみで、同意権や代理権はその対象とはなっておりません。

 

このように、上記の改正により制度の構造自体が大きく変わっており、今回ご案内した内容以外の点においても、様々な変更がなされておりますのでご留意ください。