【コラム】ロマンス詐欺にご注意を

 先日、山形市内の男性がSNSで知り合った女性を名乗る人物から現金3250万円をだまし取られる被害にあったとの報道がありました(2025.6.18 NHK News Web)

SNSやマッチングアプリなどを通じて出会った者と、実際に直接会うことなくやりとりを続ける中で恋愛感情や親近感を抱いてしまい、金銭等をだまし取られてしまう詐欺が後を絶ちません。

「2人の将来のために投資でお金を増やそう」「あなたに会いに日本へ行くから旅費を送金して欲しい」などと甘言を弄して、恋愛感情につけ込み、暗号資産の購入や架空の投資を勧めたり、ダイレクトにお金を振り込ませようとしたりしてきます。投資話の場合は、初めこそ利益が出たように見せかける場合もありますが、実際は虚偽であり、繰り返し金銭等をだまし取られるケースがほとんどです。

警視庁の調査によると、被害者は男性が63%と女性よりも多く、男性は5060歳代、女性は4050歳代の被害がともに半数を超えていますが、下は10代から上は80代までの被害者が確認されており、インターネットやSNSを利用する方であれば誰もが被害に遭う可能性があるといっても過言ではありません。

国際ロマンス・投資詐欺は、ひとたび被害に遭うと回復が極めて困難であるとされています。その理由としては、SNSでやりとりした相手と送金先口座の名義人が別人であるため両者を結びつけるのが困難であったり、SNSでやりとりをした相手の身元の特定が困難であったり、仮に送金先口座を差し押さえたとしても既に資金が殆ど残っていなかったり、仮にお金が残っていても他にも多数の被害者がいるためにそれらの被害者と金銭を分配しなければならず殆ど回収ができなかったり、SNSでやりとりをした相手方が海外在住の外国人であったりなどさまざま挙げられます。暗号資産での送金の場合も、指定されたアドレスの調査を行っても加害者を特定するのは極めて困難なのが実際のところです。

したがって、実際に会ったことがない人から投資やお金の話をされたら要注意です。また、大変残念なことですが、弁護士の中には、国際ロマンス詐欺やFX・仮想通貨詐欺の被害にかかる案件を中心にウェブ広告で大々的に集客を行い、被害者の方達から弁護士費用を得ようとする者もいますので、注意が必要です。

上述の通り、国際ロマンス・投資詐欺は、一般的に、被害回復が極めて難しい類型であるとされています。そのため、弁護士に依頼しても、その弁護士への支払分も回収できずに費用倒れになる可能性や。弁護士費用のほかに調査費用という名目でさらに多額の費用がかかる可能性があります。

被害に遭った方からすれば、わらにもすがる思いで弁護士に相談されるわけですが、そのような場合に、回収の困難さや、弁護士費用や調査費用でさらに経済的損失が拡大してしまうリスクについての説明をきちんとせず、弁護士に依頼すれば全額回収が可能であると誤信させるケースが一部見受けられ、各弁護士会が注意喚起を行っています。

国際ロマンス詐欺案件等の取扱を謳う護士業務広告の中には、①取扱事例として架空の事例を表示している、②国際ロマンス詐欺に特化した弁護士などと事実に反した広告をしている、③現実に十分な回収ができるケースはごく少数であるにもかかわらず、国際ロマンス詐欺でも多額の被害回復が出来ると誤信させるような表現をしている、④依頼者からの相談や問い合わせに事務職員が対応し弁護士が対応していないなど、弁護士法、弁護士職務基本規程、または弁護士の業務広告に関する規程に違反するおそれのあるものが散見されますので、十分な注意が必要です。

このようなケースでは、着手金を支払ったのに事件処理の報告がない、依頼後、進捗等に関する問い合わせに対し弁護士からの説明が一切ない、高額回収可能との説明に反し全く回収できず費用倒れになった、などの苦情が弁護士会や市民相談窓口に寄せられています。

大切なことは、先ずは会ったこともない人からの投資やお金の話に十分注意するということですが、さらに、万一被害に遭ってしまった場合には直ぐに警察に相談し、容易に回収ができるかのようなインターネットの広告を鵜呑みにすることがないようにしてください。弁護士に相談・依頼をされる際は、実際に弁護士と面談を行い、詐欺による被害の状況等を正確に弁護士へ伝え、被害回復の可能性があるかどうかきちんと説明を受けるとともに、依頼後も、弁護士から進捗状況等の報告が適切に行われているか確認し、相互に信頼できる関係を弁護士と築くことが大切です。