令和6年6月14日、「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」(以下「本改正法」といいます)が成立し、同月21日に公布されたことにより、現行の「技能実習制度」が廃止され、新たに「育成就労制度」が創設されることになりました。この改正した法律は、令和9年4月1日に施行されることとなっています。
そこで、この新制度の主要な変更点について、その概要を紹介します。
1 新制度「育成就労制度」の創設
本改正法により、技能実習制度が廃止され、新たに「育成就労制度」が創設されます。
新しい「育成就労制度」は、その目的と育成プロセスにおいて、これまでの「技能実習制度」から大きく転換されます。
目的については、従来の「国際貢献」から「外国人材の育成及び確保」へと変更され、人手不足分野における人材育成と人材確保を目的とする制度です(改正後「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」(以下「改正育成就労法」といいます)第1条、出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」1頁)。
また、育成プロセスにおいては、原則3年間の就労期間を通じて、受入機関は「育成就労計画」に基づき計画的な技能習得が義務付けられます。その目標水準は特定技能1号の技能・日本語能力水準と設定されています。すなわち、特定技能1号への移行を前提として3年間の育成就労期間が設けられており、所定の技能試験・日本語試験に合格すれば特定技能1号の在留資格へ切り替えてさらに最長5年間の就労が可能となります(出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」2頁)。これにより、本制度が、より長期的な在留が可能な特定技能制度への移行を前提としていることが明確になります。
2 在留資格の変更について
本改正では、「出入国管理及び難民認定法」の改正が含まれており、これにより、技能実習の在留資格を廃止され、「育成就労産業分野」(特定産業分野のうち就労を通じて技能を修得させることが相当なもの)に属する技能を要する業務に従事すること等を内容とする「育成就労」の在留資格が創設されました(改正後「出入国管理及び難民認定法」第19条の16第1号)。
3 技能実習制度からの主な変更点
育成就労制度では、旧制度で課題となっていた外国人材の権利保護や監理体制の不備に対応するため、主に以下の点が抜本的に変更されます。
①転籍(転職)の制限緩和
技能実習制度では原則として認められなかった転籍(同一業務区分内の転職)が、下記のような、一定の要件を満たした場合に可能となります(出入国在留機管理庁「育成就労制度Q&A」Q40)。
・分野ごとに分野別運用方針で定める一定水準の技能及び日本語の能力を修得していること
・育成就労産業分野ごとに分野別運用方針で定める1年以上2年以下の範囲の転籍制限期間を超えて育成就労の対象となっていること。
・転籍に当たって、民間の職業紹介事業者による職業紹介等を受けていないこと
・転籍先が優良な育成就労実施者であること
・転籍先が受け入れている育成就労外国人の総数のうちの本人意向の転籍を行った育成就労外国人の割合が一定以内であること
・転籍先が転籍元の育成就労実施者に対して一定の金額(※)を支払うこととしていること
※育成就労外国人の取次ぎ及び育成に係る費用として主務大臣が告示で定める額に、転籍元での就労期間に応じた按分率をかけた金額
②監理・支援体制の見直し
技能実習制度で問題視された監理体制についても、以下のような見直しが行われます。
・「監理支援機関」への名称変更(改正育成就労法第2条11号)
従来の「監理団体」は、許可要件が厳格化された上で「監理支援機関」へと名称が変更されます。
既存の監理団体が新制度へ移行するには、「外部監査人の設置」という新たな許可基準に基づき、厳格な審査を経て改めて許可を得る必要があります(改正育成就労法改正育成就労法第25条第1項第5号)。
・中立性・独立性の確保
また、「監理支援機関」は、受入れ機関と「密接な関係を有する役職員」を、その受入れ機関に対する業務に「関わらせてはならない」ものとされ、監理機関の中立性・独立性がより強く担保されます(改正育成就労法第39条5項)。
③送出機関の適正化
従来の技能実習制度では、「高額な手数料の徴収など、ブローカーの介在の問題」や「不適正な送出し」が大きな課題として指摘されていました。
今回の改正では、これらの問題に対応するため、送出機関の適正化に関する対策が盛り込まれています。
・送出国と二国間取決め(MOC)の作成や送出機関に支払う手数料が不当に高額にならない仕組みの導入など、送出しの適正性が担保されます(改正育成就労法第9条第1項第1号、第25条第1項第6号等)。
・地域協議会を組織することなどにより、地域の受入環境整備を促進されます(改正育成就労法第56条)。
④外国人育成就労機構の設立
育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護を図り、もって育成就労産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有する人材の育成及び育成就労産業分野における人材の確保に寄与することを目的として、「外国人育成就労機構」が設立されます(改正育成就労法第57条)。
当該機構は、育成就労計画の認定や計画に基づく育成就労が実施されているか実地検査や指導・助言を行うことが予定されております。
以上が本改正の概要です。本改正により新たに創設された「育成就労制度」は、旧制度の課題を乗り越え、外国人材の育成と確保を行い、日本の人手不足分野を解消する一助となることが期待されています。