【コラム】民法(親子法制)等の改正

 現行民法では、「嫡出推定」(婚姻関係を基礎として父子関係を推定することで、生まれた子について逐一父との遺伝的つながりの有無を確認することなく、早期に父子関係を確定し、子の地位の安定を図ろうとするもの)について、以下のとおり定められています。

 民法第772条(嫡出の推定)

 第1項 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。

  第2項 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

しかし、上記制度の存在によって、(前)夫以外の者との間の子を出産した女性が、その子が(前)夫の子と扱われることを避けるために出生届を提出しない事象が生じ、上記制度は、無戸籍者を生ずる一因となっているとの問題点が指摘されてきました。

そこで、法制審議会は、令和4年2月1日、上記問題点を将来に渡って解消していくため、以下のような要綱案をとりまとめました。

要綱案では、女性が再婚した場合は、離婚の時期にかかわらず、離婚後に生まれた子どもを現夫の子とする例外規定が追加されております。

「民法(親子法制)等の改正に関する要綱案」

 (法務省HP https://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900001_00120.html)

  民法第772条の規律を次のように改めるものとする。

① 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。

② ①の場合において、婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

③ ①の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。

④ ①から③により子の父が定められた子について、嫡出否認の訴えによりその父であることが否認された場合における③の適用においては、③の「直近の婚姻」とあるのは、「直近の婚姻(第774条の規定により子がその嫡出であることが否認された夫との間の婚姻を除く。)」とする。

また、これに伴い、女性に離婚後100日間の再婚を禁じた民法733条の規定を撤廃することも要綱案の内容に含まれております。

法制審議会は、令和4年2月14日、民法改正要綱を古川禎久法相に答申し、これを受けて、政府は、令和4年度以降の法案提出を目指すとしております。

法律家として、今後の推移を注視していきたいと思います。